2017年2月11日土曜日

韓国・槿域漢文学会 国際学術大会レポート

2017年2月10~11日、韓国・大田(テジョン)・忠南大学校において、槿域漢文学会(근역한문학회、クンヨックハンムンハクフェ)2017年春季国際学術大会が開催されました。

韓国には、中国学とは別に、漢文学研究(経史の学問を基礎として修得し、自国の漢文学を韓国独自の方法により研究する)の伝統があり、大学にも多く漢文学科が設置されています。槿域漢文学会は、こうした漢文学の学会の一つです。「槿域」とは韓半島を意味します。

今大会のテーマは、「韓国漢文学を眺める海外の視線(The Global Views of the Korean Literature in Classical Chinese)」というものであり、韓国の漢文学研究者に加え、中国、マレーシア、台湾、日本などの漢文学研究者が集まり、韓国漢文学研究をさらに発展させるための報告と議論がなされました。多くの発表において、中国語圏、英語圏、そして日本の研究に関して、最新の成果に言及されている点が印象的でした。

韓国の漢文学研究の動向を知ることは、日本の漢文学研究に対しても多くの示唆を与えます。具体的に言うならば、韓国の漢文学研究と比較することによって、日本の漢文学研究のあり方をより明瞭に理解することができます。

一つ例を挙げるならば、韓国漢文学研究において、散文(文)の分析が盛んであるのに対し、日本の漢文学研究は、詩が重視されているように考えられます。これは、戦後の日本において思想と文学とが異なる領域で研究されたこと(日本思想史と日本文学など)や、『中国詩人選集』などの中国古典詩に関する解説書が一般にもひろく読まれ、文学=詩というイメージが浸透したことの影響が大きいように思われますが、いずれにせよ、比較を通じて、自身の領域の研究の特徴・偏りについて認識を深めてゆくことが重要であると、あらためて感じました。

槿域漢文学会のページ (News欄に、大会概要・プログラム〈PDF〉があります)



基調講演を行う沈慶昊(シム・キョンホ、심경호)教授
 
※本プロジェクトの成果、及び、大阪大学大学院文学研究科共同研究の中で共同執筆された論文(下記リンク)を用いて、報告を行いました(合山林太郎「近世日本漢詩文研究から見た韓国漢文学の意義」)。
 

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