2017年7月5日水曜日

第二届南京大学域外漢籍研究国際学術研討会レポート

 7月1・2日、中国・南京大学文学院(仙林キャンパス)において、第二屆南京大學域外漢籍研究國際學術研討會(第二回南京大学域外漢籍研究国際学術検討会、国際シンポジウム、南京大学域外漢籍研究所主催)が開催された。東アジアだけでなく欧米からも総勢百名以上の研究者が集まり、2日間にわたって約80の講演や報告が行われ、中には日本漢文学関係の発表も多数含まれている。プログラムの詳細は以下のリンクよりご覧いただくとして、ここでは会全体に関わる開会式と閉会式の様子について概況を記したい。
http://www.weixinnu.com/article/5965893f09e6f39a0288f8c4

 開会式では、まず本大会の主催を統括する卞東波教授(南京大学文学院)が10年前すなわち2007年に開かれた大会の様子を振り返り、1回目と2回目に参加した「二朝元老」に加えて今回はじめて参加する新進気鋭の若手研究者が一同に集まり、学術の発展とともに研究者の成長も見られると挨拶した。
 次に、歓迎の辞を賜った南京大学文学院院長の徐興無教授が、我々の目指す学術の理想は、文献の捜索にとどまらず、東アジアと世界の文明発展の経験と教訓を探すこと、より高い志を持つべきことを述べた。また域外漢籍研究所の創設者である張伯偉教授の業績を紹介しつつ、域外漢籍研究の専門家は、10年前の第一回目の大会が、「風起雲揚」(漢・武帝「大風歌」の「大風起兮雲飛揚(大風 起りて 雲 飛揚す)」を踏まえる、天下の英雄への呼びかけ)というキャッチフレーズのもと行われたが、10年後の今は「気象万千(景色が千変万化しすばらしいこと、宋・范仲淹「岳陽楼記」中の言葉)」とでも言うべき状態にあると講じた。
 その後、張伯偉教授よる開幕の辞があり、張教授は過去の10年間の若手研究者の成長について言及し、さらにイギリス文学研究やフランス文学研究の例を引き合いに出しつつ、典籍の博捜が主であったこれまでの研究を、今後はより一層新事実・新理論・新方法を試みる方向に進展させるべきことを指摘した。長い間、文学研究は「学而無術(学びて術無し)」・「術而不学(術ありて学ばず)」、すなわち知識がある者は方法論の面で乏しく、逆もまた然りという状態が続いたが、今後はそのような状態は改められなければならないと講じた。
 開会式の後は崔溶澈教授(韓国・高麗大学)、高津孝教授(鹿児島大学)、ジョシュア・A・フォゲル教授(Joshua A. Fogel、カナダ・ヨーク大学)、王国良教授(台北大学)、張伯偉教授により記念講演が行われた。
 
 閉会式では、顧青教授(中華書局)、李慶教授(金沢大学)、稲畑耕一郎教授(早稲田大学)、耿彗玲教授(台湾・朝陽科技大学)、衣若芬教授(シンガポール・南洋理工大学)、朴現圭教授(韓国・順天郷大学)、河野貴美子教授(早稲田大学)、廖肇亨教授(台湾・中央研究院)、林宗正教授(カナダ・ビクトリア大学)、王小盾教授(中国・溫州大学))、静永健教授(九州大学)、蔡振豊教授(台湾大学)が登壇し、それぞれ今大会での議論あるいは過去10年間の域外研究の軌跡を概括しつつ、今後の展望などについてコメントした。域外漢籍研究のこれまでの蓄積が大きなものであること、若手研究者が増加し、国際交流が活発化していること、また、課題として、たとえば、ウェブでの情報発信やデータベースの構築、さらにビッグデータの活用などが挙げられるなどといった、様々な方面からの提言がなされた。
 
 まる2日間に及ぶ今大会は、収穫も多く、密度の濃いものであった。多数の大学院生や中国国内の研究者が聴講に訪れ、会場は終始熱気に包まれていた。今後、中国ではこの領域の研究がますます活発化することが予想される。
(楊昆鵬・合山林太郎)


 
開会の辞を述べる張伯偉教授(右)と卞東波教授(左)

 

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